交通事故の嘘の被害はばれる? むちうちの虚偽申告をしてもいい?
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令和6年にさいたま市で発生した交通事故による負傷者は2903名で、そのうち浦和区の負傷者は266名でした。
交通事故の被害者が損害賠償請求を行う際、加害者側の保険会社に対して嘘の報告をして、より多くの賠償金を受け取ろうとお考えの方もいるかもしれません。しかし、以下に述べるとおり、保険会社に対して嘘をつくのは避けるべきです。
交通事故の損害賠償を増額するには、実際の事故状況に即して、法的な観点から適切な主張を行うことが大切です。弁護士のサポートを受けながら、最大限の損害賠償の獲得を目指しましょう。
本記事では、交通事故について嘘をつくとバレるのかどうか、嘘をつかずに損害賠償を増額する方法などをベリーベスト法律事務所 浦和オフィスの弁護士が解説します。
出典:「令和6年交通事故死者数」(埼玉県警察)


1、交通事故のケガについて嘘をつくとバレる?
交通事故によってケガをした被害者は、加害者側に対して損害賠償を請求可能です。ケガの程度が重いほど、受け取れる損害賠償の額は高くなります。
その際、なるべく多くの損害賠償を受け取るために、ケガの状態が実際よりも重いように申告する方もいるようです。しかし、交通事故のケガについて嘘をつくと、以下のようなきっかけで嘘がバレてしまうことがあります。
- 加害者側に伝えたケガの症状と、医師の診断書の内容が整合しない
- ドライブレコーダーの映像で分かる事故の状況から、加害者側に伝えたようなケガが発生する可能性は極めて低い
- 被害者側のケガに関する申告内容が曖昧、または一貫性を欠いている
交通事故のケガについて嘘をつくと、バレた際に大きなトラブルになるおそれがあります。ケガの内容は、実際の状態をそのまま伝えるようにしましょう。
2、交通事故のケガについての嘘がバレたらどうなる?
交通事故のケガについて嘘をついていたことがバレると、以下のようなトラブルに発展するおそれがあるので注意すべきです。
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(1)損害賠償金の返還を請求される
ケガに関する嘘の申告に基づいて損害賠償金が支払われ、後日嘘がバレると、損害賠償金の返還を請求されるおそれがあります。
示談書を締結していても、それが嘘の事実に基づく場合は、錯誤(民法第95条第1項)や詐欺(民法第96条第1項)によって、示談の合意が取り消されてしまうリスクがあります。そうなれば、損害賠償金の全額を返還したうえで、改めて示談交渉を行わなければなりません。
錯誤や詐欺の場合の損害賠償金の返還請求は、訴訟(裁判)を通じて争われることもあり得ます。訴訟に発展することになれば、争いが泥沼化することになり、多くの費用や労力がかかるような事態になるでしょう。 -
(2)詐欺罪によって処罰される
ケガについて嘘の申告をして、適正額よりも多くの損害賠償を受け取ろうとする行為は、刑事事件としての「詐欺罪」に該当する可能性があります(刑法第246条第1項)。
詐欺罪は、他人をだまして財物(お金など)を交付させる犯罪です。法定刑は「10年以下の拘禁刑」とされています。
このようなケースで、詐欺罪で逮捕され、起訴までされることはそう多くはありませんが、悪質と判断されれば、詐欺罪で摘発される可能性もありますので、嘘の申告をすることはやめましょう。本来よりも高い額の損害賠償を不当に受け取るため、医師の診断書を偽造するなどした場合には、私文書偽造罪(刑法第159条第1項)にもあたることになりますので、注意が必要です。
お問い合わせください。
3、嘘をつかずに交通事故の損害賠償を増額するには?
加害者側が提示する損害賠償額に納得できないなら、ケガについて嘘をつくのではなく、正当な手段を用いて損害賠償の増額を目指しましょう。
以下のポイントに留意して対応すれば、損害賠償を増額できる可能性は十分あります。
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(1)損害額を漏れなく集計する
交通事故の被害者は、加害者側に対してさまざまな項目の損害賠償を請求できます。主な損害賠償の項目は以下のとおりです。
損害賠償の項目 概要 治療費 ケガの治療や検査を受けるため、医療機関や薬局に対して支払った費用 通院交通費 ケガを治療するための通院に要した交通費 装具・器具購入費 ケガの治療やリハビリのために必要な装具や器具の購入費用
(例)義歯、義手、義足、眼鏡、車いす、コルセット、サポーターなど介護費用 交通事故によって要介護状態となった場合に、将来の介護に要する費用 入院雑費 ケガを治療するための入院中に、日用品などを購入するための費用 葬儀費用 交通事故で亡くなった被害者の葬儀費用 休業損害 ケガの影響で仕事を休んだ場合に減少した収入
※ケガのために有給休暇を取得した場合も、休業損害の賠償を請求可能逸失利益 ケガの後遺障害や死亡によって労働能力が失われたことに伴い、将来にわたって減少・喪失することが見込まれる収入 入通院慰謝料 ケガによって受けた肉体的・精神的苦痛に対する賠償金 後遺障害慰謝料 ケガの後遺障害によって受けた肉体的・精神的苦痛に対する賠償金 死亡慰謝料 交通事故で亡くなったことによって、本人が受けた肉体的・精神的苦痛に対する賠償金、および遺族が受けた精神的苦痛に対する賠償金
これらの損害を漏れなく集計することが、損害賠償の増額につながります。
その際は、弁護士のサポートが欠かせません。すべての損害をリストアップしたうえで、漏れなく集計・請求しましょう。 -
(2)適切な後遺障害等級の認定を受ける
交通事故のケガが完治せず後遺障害が残った場合は、損害保険料率算出機構に「後遺障害等級」の認定を申請可能です。後遺障害の部位や症状に応じて、要介護1級・2級または1~14級の後遺障害等級が認定されます。等級の数字が小さいほど、症状が重症であることを表します。
後遺障害等級は、加害者側に対して請求できる「後遺障害慰謝料」と「逸失利益」の額に影響します。
等級が重い場合には、後遺障害慰謝料と逸失利益は、どちらも数百万円以上の高額となるケースが少なくありません。認定される後遺障害等級がひとつの階級分変わるだけで、受け取れる損害賠償(保険金)の額が大きく変わります。
適正額の後遺障害慰謝料や逸失利益の賠償を受けるためには、後遺障害の状態に見合った適正な後遺障害等級の認定を受ける必要があります。
医師が作成する後遺障害診断書などの書類をそろえて、後遺障害の実際の状況が伝わるような形で後遺障害等級の申請を行いましょう。 -
(3)弁護士基準(裁判所基準)で損害賠償を請求する
交通事故の損害賠償額を算定する基準は、3種類あります。それぞれどのような基準なのか紹介しましょう。
① 自賠責保険基準
自賠責保険から支払われる保険金の額を算定する基準です。自賠責保険は、被害者に最低限の補償を提供することを目的としているため、金額は3つの基準のなかでもっとも低くなります。
② 任意保険基準
加害者側の保険会社が独自に定めている算定基準です。自賠責保険基準よりは金額が若干高くなるものの、被害者に生じた客観的な損害がすべて補填されるわけではありません。
③ 弁護士基準(裁判所基準)
過去の裁判例に基づき、被害者に生じた客観的な損害額を算定する基準です。3つの基準でもっとも被害者にとって有利、かつ公正な基準となっています。
交通事故の被害者は、弁護士基準による損害賠償を受ける権利があります。適正額の損害賠償を受けるためには、弁護士基準によって損害賠償を請求することが大切です。
弁護士基準で損害賠償を請求するためには、弁護士のサポートが欠かせません。弁護士であれば、過去の裁判例などの法的根拠を示しながら、弁護士基準による損害賠償を請求可能です。適正な損害賠償を請求するには、弁護士に相談しましょう。 -
(4)自分の過失割合を下げる
交通事故の損害賠償額には、「過失割合」が大きく影響します。
過失割合とは、交通事故の当事者間における責任の割合です。加害者が完全に悪い場合は「10対0」となりますが、被害者にも落ち度がある場合は「9対1」や「8対2」などとなります。
被害者側に過失が認められる場合は、被害者が受けられる損害賠償の額が減ってしまいます。加害者側は、支払う損害賠償の額を減らそうとして、被害者側に不利な過失割合を主張してくることもあるでしょう。
被害者側としては、交通事故の客観的な状況に応じた適切な過失割合を主張する必要があります。加害者側が提示する過失割合が不適切である場合は、ドライブレコーダーの映像や実況見分調書などの証拠を示しつつ、過失割合の修正を求めましょう。
4、交通事故について弁護士に相談するメリット
交通事故の被害に遭ったら、損害賠償請求について弁護士に相談することをおすすめします。
交通事故について弁護士に相談することの主なメリットは、以下のとおりです。
- 加害者側の保険会社から連絡を受けた場合の対応について、アドバイスを受けられる
- 交通事故による損害を漏れなく集計できる
- 後遺障害等級認定のサポートを受けられる
- 適正な基準(=弁護士基準)によって損害額を計算できる
- 適切な過失割合に基づいて損害賠償を請求できる
- 加害者側との示談交渉や訴訟などの手続きを一任でき、手間が省ける
- 損害賠償を増額できる可能性がある
交通事故案件の経験が豊富な弁護士に依頼すれば、手続きや交渉の労力を軽減しつつ、損害賠償を増額できる可能性があります。交通事故の損害賠償請求は、弁護士にご相談ください。
5、まとめ
交通事故の損害賠償を増額したいからと言って、ケガの程度について嘘をついてはいけません。後日バレると、保険会社から損害賠償の返還を求められるなど、大きなトラブルに発展するおそれがあるからです。
ケガに関して嘘をつかなくても、事実と法的根拠に基づいて適切に請求を行えば、損害賠償の増額は十分可能です。ベリーベスト法律事務所 浦和オフィスでは、交通事故についてのご相談を随時受け付けておりますので、お早めにご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
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