保険金を受け取っても遺産相続は可能|保険金を活用した生前対策も解説

2024年09月04日
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保険金を受け取っても遺産相続は可能|保険金を活用した生前対策も解説

さいたま市の統計によると2023年度浦和区内だけでも1418名の方が亡くなりました。親族が亡くなった場合、死亡保険金は相続対象か、相続人が悩むケースがあります。

結論からいうと、死亡保険金は、基本的に受け取る方の固有財産であり、遺産として相続することができます。また、相続放棄をしても死亡保険金の受け取りは可能です。

ただし、生命保険の加入状況によっては、相続税・贈与税・所得税が発生することがあります。そこで今回は、死亡保険金と遺産相続の関係や相続税の計算方法、生前対策についてベリーベスト法律事務所 浦和オフィスの弁護士が解説します。


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1、死亡保険金と遺産相続の関係

死亡保険金を受け取ることになったものの、他の遺産を受け取ることができるのか、相続放棄した場合どうなるのか、疑問に思っている方もいると思います。そこで、まずは死亡保険金と遺産相続の関係について解説します。

  1. (1)保険金を受け取っても遺産を相続する権利はある

    生命保険の死亡保険金は、相続財産ではなく、受取人の固有財産とみなされます。そのため、保険金を受け取っても遺産を相続する権利があります。また、固有財産であるため、遺留分侵害額請求の対象にもなりません。

    ただし、2章で後述するように、死亡保険金を受け取る「受取人」が「相続人」でもあった場合は、相続税の課税対象になるケースがあるため注意が必要です。

  2. (2)相続放棄をしても保険金を受けることはできる

    相続放棄をしても保険金を受け取ることはできます。相続放棄は、相続人としての地位を放棄するものです。一方で、保険金の受取人としての地位は、保険の契約に基づいたものであり、相続放棄したとしても失うものではありません。

    そのため、借金や負債が多く、相続放棄したいと考えている場合には、遺産については相続放棄をし、死亡保険金だけを受け取ることもできます

2、死亡保険金にかかる税金

死亡保険金でも、税金がかかるケースがあります。そこで、誰が保険料を支払い(契約者)、誰が保険の対象となり、(被保険者)、誰が保険金を受け取るのか(受取人)のケースに分けて紹介します。

  1. (1)故人が保険金を支払い被保険者でないケース

    被相続人である故人が契約者として保険料の支払いをし、配偶者や子どもなどを被保険者にしているなどのケースです。

    この場合、契約者が今まで支払っていた保険料に応じて、被保険者は解約返戻金を請求することができます。ただし、返戻金を請求できるのは相続人に限られるため、保険会社には相続人であることを証明する必要があります。


    また、解約返戻金は、相続により得た財産と考えられるため、相続税が発生します。

    なお、契約者が存命中に、被保険者が亡くなり、死亡保険金を受け取る場合には受取人に贈与税が発生します。

  2. (2)故人が保険金を支払い被保険者であるケース

    被相続人である故人が契約者として保険料の支払いをし、自身を保険の対象にしているケースです。

    この場合、相続人が死亡保険金を受け取ったとしても固有財産となるため相続財産には含まれないだろう、と考える方もいるかもしれません。

    しかし、契約者と被保険者が同一人物であり、受取人を配偶者や子ども(=相続人)にしているケースにおいては、「みなし相続財産」として、相続税が課されるため注意が必要です

    また、受取人が指定されていない場合には、法定相続人が保険金を相続することになります。この場合も、死亡保険金は相続財産とみなされ、遺産相続の対象として相続税を支払うことになります。

    ただし、「500万円×法定相続人の数の保険金」までは非課税の軽減措置があります(詳しくは3章で後述)。

  3. (3)故人が被保険者であり受取人のケース

    被相続人である故人が、保険の対象である被保険者であり、かつ受取人であるケースをみてみましょう。

    たとえば、死亡事故の保険も含まれている傷病保険や旅行保険など、自分が保険の対象であり、受取人になっているケースが考えられます。

    この場合、死亡保険金には所得税が発生します。また、所得税の課税対象になる場合には、住民税も発生します。

    死亡保険金の受取人は、保険契約の約款の内容で決まります。約款で受取人が指名されている場合には、保険金は受取人の固有の財産になるため、相続財産の対象にはなりません。そのため、約款で指名された受取人は、所得税と住民税を支払うことになります。

    他方、約款で受取人が指定されていない場合には、保険金は各法定相続人で均等に分割します(保険法46条)。そのため、受取人が指定されていない場合には、法定相続人全員で死亡保険金を分割して受け取ることになります。

3、死亡保険金の相続税を控除することは可能?

死亡保険金にかかる税金は、控除できる可能性があります。本章では、どのような場合に控除が可能かを紹介します。

  1. (1)保険金にかかる相続税の控除が可能

    相続の対象となる死亡(生命)保険でも、「500万円×法定相続人の数」は、控除の対象として軽減することができます

    たとえば、以下のケースで考えてみましょう。

    • 法定相続人:配偶者、子ども2人
    • 非課税金額:500万円×3人=1500万円


    この場合、1500万円までの死亡保険金であれば、相続税の支払いはありません。

    その他に、被相続人に借金やローンなどの債務がある場合には、債務控除として相当額を差し引くことができます。加えて、相続人が支出したお通夜、告別式などの葬式費用も控除することができます。ただし、墓石や墓地、初七日などの費用は対象にはなりません。

    また、そもそも「3000万円+600万円×法定相続人の数」の金額については、相続税の基礎控除額であるため、この金額を超えない場合には相続税が発生しません。

  2. (2)相続税の計算例

    以下のケースを例に、死亡保険金を含めた相続税算出の流れを考えてみましょう。

    • 法定相続人:妻、子ども3人
    • 相続財産:1億円
    • 死亡保険金:5000万円、受取人は妻


    ① 課税価格の計算
    相続税の計算にあたって、まずは課税される財産の計算が必要です。今回のケースで課税されるのは、相続財産1億円と死亡保険金です。

    死亡保険金は5000万円ですが、相続人が4人いるため、「500万円×法定相続人4人」の2000万円は課税の対象外になります。

    つまり、相続財産1億円と死亡保険金のうち3000万円が課税の対象です。

    ② 課税遺産総額の計算
    課税価格の計算をしたら、次に実際に課税される遺産総額の計算をします。相続税の基礎控除額は、「3000万円+600万円×法定相続人4人」のため、5400万円です。

    そのため、相続財産1億円+死亡保険金3000万円−基礎控除額5400万円=7600万円が課税遺産総額です。

    ③ 相続税の計算
    課税遺産総額が確定したら、相続分に応じて相続税が発生することになります。今回は、法定相続分に応じて相続したと仮定します。そうすると、妻が1/2、子どもがそれぞれ1/6ずつ相続することになります。

    相続人 課税遺産総額×法定相続分 相続額
    7600万円×1/2 3800万円
    子1 7600万円×1/6 約1260万円
    子2 7600万円×1/6 約1260万円
    子3 7600万円×1/6 約1260万円


    上記の相続額に税率を掛け、速算控除額を引いた金額が相続税の総額になります。

    相続人 相続額×税率−速算控除額 相続税額
    3800万円×20%−200万円 560万円
    子1 約1260万円×15%−50万円 139万円
    子2 約1260万円×15%−50万円 139万円
    子3 約1260万円×15%−50万円 139万円


    つまり、相続税の総額は、560万円+139万円+139万円+139万円=977万円になります。

    参考:相続税の税額速算表(国税庁)

    取得金額 税率 速算控除額
    1000万円以下 10% 0万円
    3000万円以下 15% 50万円
    5000万円以下 20% 200万円
    1億円以下 30% 700万円
    2億円以下 40% 1700万円
    3億円以下 45% 2700万円
    6億円以下 50% 4200万円
    6億円超 55% 7200万円


    ④ 各相続人の納付額
    相続税の総額が計算できたら、各相続人の相続額に応じた割合で相続税を納付することになります。

    今回のケースでは、相続財産が1億円、死亡保険金の受取人が妻であり、金額が5000万円の場合でした。そのため、相続財産1億円をまず法定相続分に応じて配分する必要があります。そうすると、以下のようになります。

    相続人 相続財産×法定相続分 相続財産額
    1億円×1/2 5000万円
    子1 1億円×1/6 約 1600万円
    子2 1億円×1/6 約1600万円
    子3 1億円×1/6 約1600万円


    上記の金額に加え、妻には5000万円の死亡保険金があるため、妻の相続財産は1億円となります。他方で、子どもの各相続財産は、上記の約1600万円です。これらの金額が相続財産全体のうち何%にあたるか算出します。

    算出した相続割合に応じて、相続税を按分すると下記のように納付額が決定します。

    相続人 相続割合 相続税×相続割合=納付額
    約67% 977万円×67%=約654万円
    子1 約11% 977万円×11%=約107万円
    子2 約11% 977万円×11%=約107万円
    子3 約11% 977万円×11%=約107万円


    上記のように納付額を計算することができますが、さらに配偶者控除や子どもの年齢によっては未成年者控除などを利用することができます。

    これまで見てきたように税金の計算は複雑でとても難しいものです。そのため、税理士や弁護士などに相談することをおすすめします。

4、死亡保険金のトラブルは弁護士に相談を

死亡保険金は、基本的には受取人固有の財産です。しかし、保険金をもらったなら相続放棄してほしいなど、他の相続人から相続放棄するように言われてしまうことがあるかもしれません。

また、死亡保険金は高額になることも多く、保険金を巡っての相続トラブルになる可能性も高くなります。しかし、死亡保険金は被相続人が受取人の今後の生活のために残してくれた大切なお金です。そのため、受取人には保険金を受け取る権利があります。

そのため、保険金を巡ってトラブルになったり、相続放棄するように迫られたりした場合には、早めに弁護士に相談することをおすすめします

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5、まとめ

死亡保険金を受け取っても遺産を相続することができます。また、相続放棄をしても死亡保険金を受け取れなくなるということもありません。

しかし、条件によって税金が発生したり、他の相続人とトラブルになったりするケースもあります。そのため、保険金を巡ってトラブルになってしまった場合やトラブルになりそうな場合には、速やかに弁護士に相談することをおすすめします。

ベリーベスト法律事務所 浦和オフィスでは、遺産相続の経験ある弁護士が保険金のトラブルや相続のお悩みにアドバイスさせていただきます。また、同グループの税理士と連携し、税金に関するご相談をワンストップで承ることができます。死亡保険金のトラブルでお悩みの方は、当事務所にご相談ください。

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