養育費の計算方法は? 所得の調べ方や注意点を弁護士が解説
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令和4年のさいたま市浦和区の婚姻件数は867件、離婚件数は183件でした。子どものいる夫婦が離婚したときは、子どもと一緒に住まない親が扶養義務に基づき、一緒に住む親に対して養育費を支払う義務を負います。
養育費の適正額は、父母の所得のバランスによって決まります。お互いの所得を正しく把握した上で、適切な方法で養育費の額を計算しましょう。
本記事では、養育費の計算に必要な所得を調べる方法や、養育費を計算・決定する際の注意点などをベリーベスト法律事務所 浦和オフィスの弁護士が解説します。


1、養育費の計算方法は?
離婚後の養育費の適正額は、主に以下の要素によって決まります。
- 父母の所得(収入)のバランス
- 子どもの人数
- 子どもの年齢
上記の要素を反映した養育費の適正額を知るためには、裁判所が公表している養育費算定表を利用するのが便利です。
参考:「養育費・婚姻費用算定表」(裁判所)
養育費算定表は、子どもが1人から3人までの場合に利用することができます。
9つの表(表1~9)から該当するものを選択して、権利者(受け取る側)の年収と義務者(支払う側)の年収が交差する点を確認すると、養育費の適正額の目安が分かります。
会社員などの給与所得者と自営業者では、参照すべき列(行)が異なる点にご注意ください。
2、養育費の計算に必要な所得を調べる方法
養育費の計算に必要な父母の所得は、会社員の場合と自営業者の場合で調べる方法が異なります。
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(1)会社員の場合|源泉徴収票の支払金額を確認する
養育費の計算に用いる会社員の所得は、原則として源泉徴収票の「支払金額」の欄を参照します。
「支払金額」の欄には、税金や社会保険料、基礎控除や扶養控除等の各種所得控除が差し引かれる前の給与額が記載されています。
役職手当や家族手当など、実質的に給与である手当は「支払金額」に含まれています。
これに対して、通勤手当などの実費に相当する手当は「支払金額」に含まれません。
ただし後述するように、会社員であっても不動産賃料や株式配当を得ているなど、給与以外の収入が存在するケースがあります。
この場合は、源泉徴収票だけでは正確な所得金額を知ることができません。念のため、市区町村役場が発行する課税証明書の提出を求めた方がよいでしょう。市区町村の課税証明書は、源泉徴収票を保存していない場合などにも参照することができます。 -
(2)自営業者の場合|確定申告書の課税所得金額を確認する
養育費の計算に用いる自営業者の所得は、所得税の確定申告書によって確認するのが一般的です。具体的には、以下の方法によって所得金額を計算します。
- ① 第一表の「所得金額等」の合計額を確認する
- ② ①の額から、社会保険料控除の額を差し引く
- ③ ②で計算した額に、青色申告特別控除などの実際に支出していない控除額を加算する
ただし、上記の方法で求めることができるのは、総合課税の対象とされている所得のみです。株式の配当など、分離課税として申告している所得が存在するケースもあるので注意しましょう。
分離課税の所得は、確定申告書第三表の「所得金額」の欄を参照すれば分かります。
3、養育費を計算・決定する際の注意点
養育費の金額を計算し、父母間で話し合って決める際には、特に以下の各点に注意しましょう。
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(1)不動産賃料や株式配当などの副収入もチェックする
勤務先から支払われる給与や事業収入など、メインとなる所得だけを把握して、その他の所得を見落としてしまうケースが散見されます。
特に見落としやすいのは、不動産の賃料、株式配当、副業収入などです。これらの収入も所得に加算しなければ、養育費の適正額を求めることはできません。
会社員の場合、源泉徴収票には給与所得に関する事項しか記載されません。市区町村の課税証明書を提出させるなどして、給与以外の所得がないかどうかをチェックしましょう。
自営業者の場合は、申告漏れがなければ確定申告書にすべての所得が表れています。確定申告書の内容を隅々までチェックしつつ、所得が少なすぎると思われる場合は通帳の写しなどの提出を求めましょう。 -
(2)相場より増額したい場合は、必要性を具体的に主張する
養育費算定表によって計算される養育費の額に含まれているのは、あくまでも公立中学・公立高校への進学を前提とした標準的な生活費や教育費などだけです。子どもの進路や健康状態などに応じて話し合い、家庭の事情に合わせて養育費を増額することはできます。
相場に比べて養育費を増額したいときは、その必要性を具体的に主張しましょう。たとえば、以下のような事情を主張することが考えられます。- 私立学校に進学するので、学費が多くかかる
- 豊かな経験をさせるために習い事をさせたいので、その費用がかかる
- 慢性的な疾病を患っているので、医療費が多くかかる
上記のような費用は、毎月の養育費に上乗せする方法もありますが、支出が発生するたびに特別費用として精算する方法も考えられます。
父母間でよく話し合って、子どものより良い成長につながるような養育費の精算方法を定めましょう。 -
(3)養育費を取り決めたら、公正証書を作成する
養育費の金額や支払方法を取り決めたら、その内容をまとめた公正証書を作成しましょう。公正証書は、公証役場に申し込めば作成できます。
公正証書によって養育費に関する事項を定めた上で「強制執行認諾文言(※)」を記載しておけば、養育費の不払いが生じた際には直ちに強制執行を申し立てることができます。
(※強制執行認諾文言:債務不履行が生じた際には、直ちに強制執行に服する旨の債務者の陳述)
養育費の支払いは長期間に及ぶところ、途中で支払いが滞ってしまうケースもよくあります。不払いのリスクに備えるため、養育費に関する合意書は公正証書で作成しましょう。
4、養育費について弁護士に相談するメリット
離婚後の養育費を取り決める際には、弁護士に相談することをおすすめします。養育費について弁護士に相談することの主なメリットは、以下のとおりです。
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(1)養育費の適正額を正しく計算してもらえる
弁護士に相談すれば、父母の収入バランスや子どもの人数・年齢などに応じて、養育費の適正額を正しく計算してもらえます。
自力で配偶者の収入・所得を把握するのが難しい場合でも、弁護士に依頼すれば、資料の開示請求などを通じてきちんと調査することができます。 -
(2)相手との交渉を代行してもらえる
養育費やその他の離婚条件について、相手との交渉がまとまらない場合には、弁護士に依頼して相手との交渉を代行してもらいましょう。
弁護士が代理で対応することで、相手と直接話す必要がなくなり、労力や精神的ストレスが大幅に軽減されます。また、相手が不合理な条件を提示してきても、法的な観点から適切に反論することができます。 -
(3)交渉がまとまらないときは、裁判手続きの対応を一任できる
養育費やその他の離婚条件に関する交渉は、双方の主張が大きく食い違っていてまとまらないケースもあります。
その場合は、離婚成立前であれば離婚調停や離婚訴訟、離婚成立後であれば養育費請求調停・審判を通じて争うことになります。
調停・訴訟・審判などの裁判手続きは、いずれも専門的かつ複雑であり、慎重な対応が求められます。そのため、一般の方が自力でこれらの手続きに対応するのは非常に大変です。
弁護士に依頼すれば、裁判手続きに関する対応を一任することができます。弁護士は調停委員や裁判官に対して、法的な観点から説得的に主張を行い、有利な解決に向けてサポートします。
適正な養育費を受け取るためには、弁護士への相談が大きな第一歩です。離婚後の養育費について不安を抱えている方は、お早めに弁護士へご相談ください。
お問い合わせください。
5、まとめ
養育費の適正額は、子どもの人数や年齢のほか、父母の所得のバランスによって決まります。
会社員の場合は原則として、源泉徴収票の「支払金額」が所得となります。ただし、給与以外の所得を得ているケースもあるので、念のため市区町村の課税証明書などの提出も求めましょう。
自営業者の場合は、確定申告書の課税所得金額が所得となります。事業所得などの総合課税所得に加えて、株式配当などの分離課税所得を得ているケースもあるので、見落とさないように注意しましょう。
養育費の適正額を正しく計算した上で相手に請求するためには、弁護士によるサポートが役立ちます。相手の所得額が分からない場合でも、弁護士が丁寧に調査し、交渉や裁判手続きへの対応も、弁護士が一括して行います。
ベリーベスト法律事務所は、養育費に関するご相談を随時受け付けております。離婚成立の前後を問わず、お客さまが適正額の養育費を受け取れるように、実績ある弁護士がサポートいたします。
離婚後の養育費の請求についてお悩みの方は、ぜひ一度ベリーベスト法律事務所 浦和オフィスへご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
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