離婚調停で取り決めた養育費を相手が支払わない……どうすればいい?

2025年06月18日
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離婚調停で取り決めた養育費を相手が支払わない……どうすればいい?

さいたま市の公表している「さいたま市 保健統計」によると、令和3年に浦和区では183組の離婚が成立しましたが、そのうち19組が離婚調停で離婚を成立させる「調停離婚」でした。

養育費について離婚調停で取り決めたにもかかわらず相手が支払ってくれないというケースは、残念ながら少なくありません。では、離婚調停の取り決めどおりに養育費を支払ってくれない相手に対してどのように対応すればいいのでしょうか?

離婚調停で取り決めた養育費を相手が支払わない場合の対処法について、ベリーベスト法律事務所 浦和オフィスの弁護士が詳しく解説します。


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1、養育費の支払いは義務?

養育費の支払いは、法律で定められている義務です(民法第766条1項)。

養育費の支払い義務は、「生活保持義務(=自分と同等の水準の生活を保障する義務)」であり、親はたとえ自分に余力がない状況であっても子どものために可能な限りその生活費や教育費を負担する義務があり、その義務は離婚をした場合でも変わりません

離婚前に養育費について取り決める場合は「離婚協議」「離婚調停」「離婚裁判」のいずれかの方法で取り決めます。

「離婚調停」は話し合いによる解決を目指す手続きであり、裁判による命令ではありません。しかし、調停に合意すると裁判所が作成する「調停調書」の記載事項(養育費についての取り決めやその他離婚条件など)には、確定判決と同一の効力があります

したがって、当事者は調停で取り決めた内容を守る義務があり、その義務を義務者(債務者)が怠った場合には、権利者(債権者)は「強制執行」を行うことが可能になるのです(次章で詳しく解説)。

2、離婚調停で取り決めた養育費を相手が支払わない場合の対処法

離婚調停で取り決めたにもかかわらず、相手(債務者)が養育費を支払わない場合の対処法について詳しく解説します。

  1. (1)電話やメールなどで支払いを催促する

    まずは、相手に電話やメールなどを利用して、離婚調停での取り決めどおりに養育費を支払うように催促しましょう。

    相手は故意に支払わなかったわけではなく、うっかりしていたり、忙しくて振り込む時間がなかったりして支払えなかった、という場合もあります。その場合は、電話やメールなどで催促することで支払ってもらえる可能性があるでしょう。

    しかし、相手が故意に支払わなかった場合は、催促しても無視されてしまう可能性があります。その場合は次の手段を使いましょう。

  2. (2)話し合いが進まない場合は内容証明郵便で請求する

    話し合いが進まなかったり催促を無視されたりした場合は、内容証明郵便で未払い分の養育費の支払いを請求します。「内容証明郵便」とは、日本郵便が書面の内容や送付日、差出人・受取人などについて証明してくれるサービスです。

    内容証明郵便を使って養育費の支払い請求をすることで、相手に本気度が伝わり、支払いに応じてもらえる可能性があります。

  3. (3)履行勧告や履行命令

    内容証明郵便を利用して未払い養育費を請求しても応じてもらえない場合は、「履行勧告」や「履行命令」という制度を利用して請求しましょう

    ① 履行勧告
    「履行勧告」とは、調停で取り決めた内容を守らない義務者に対して、家庭裁判所に「養育費の支払い義務を履行しなさい」と勧告してもらう手続きです(家事手続法第289条1項)。
    履行勧告に強制力はないため、相手は履行勧告に従わなくても罰を受けることはありません。しかし、裁判所から書類が届くことで、プレッシャーを感じて支払いに応じてもらえる可能性があります。

    ② 履行命令
    履行勧告を無視された場合は「履行命令」の手続きを行いましょう。「履行命令」とは、義務者に対して裁判所から「期限内に取り決めどおりに養育費の支払い義務を履行しなさい」という義務の履行命令を出してもらう制度です
    履行命令に従わない場合は、10万円以下の罰金(過料)を課される可能性があるため、履行勧告よりも債務を履行してもらえる可能性が高いでしょう。ただし、履行勧告と同様に履行命令も強制力はありません。
  4. (4)強制執行手続きを進める

    履行勧告・履行命令を無視された場合は、最終手段である「強制執行」の手続きを進めましょう。

    「強制執行」は、裁判所が義務者に対して強制的に義務を履行させる手続きです。強制執行手続きを行うことで、義務者の給料や預貯金を差し押さえて未払い分の養育費を強制的に回収することができます

    強制執行をするためには「債務名義」という書類が必要です。離婚調停の際に作成される「調停調書」がこれに該当するほか、判決書や強制執行認諾文言付き公正証書、和解調書などの書類も債務名義に該当します。

    離婚調停で養育費について取り決めをした場合は、調停調書を債務名義として、義務者の住所地を管轄する地方裁判所に強制執行を申し立てるようにしましょう。

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3、相手側の養育費の支払いが免除、減額されるケースもある

養育費の支払いは法律でも定められた義務です。しかし、中には養育費を支払う義務者の支払いが免除・減額されるケースがあります。詳しくみていきましょう。

  1. (1)病気やケガなどで働けなくなり支払い能力がなくなった

    病気やケガなどが原因で働けなくなった場合は支払い能力がありません。支払い能力がない以上、養育費の支払いが免除あるいは減額になる可能性があります。

  2. (2)財産分与を多めに分配するなどで養育費を支払わないことに合意している

    離婚調停において財産分与を多めに分配する代わりに養育費は支払わないことについて合意している場合は、取り決めどおり養育費を支払う義務はありません。

    ただし、離婚後に事情が変わり(親権者が病気やケガで働けなくなったなど)子どもとの生活に支障が出ている場合は、養育費を請求することができます。

  3. (3)子どもが就職した

    養育費は未成熟子(社会的・経済的にまだ自立していない子ども)のための費用です。したがって、子どもが就職して社会的・経済的に自立した場合は養育費が必要なくなることから、支払いが免除になる可能性が高いでしょう

    ちなみに、子どもが結婚した場合も同様に子どもが社会的・経済的に自立したとみなされるため、養育費の支払いが免除になる可能性が高いです。

  4. (4)親権者の収入が増えた

    就職や転職、昇進や起業などによって離婚後に親権者の収入が増加した場合は、養育費の減額が認められる場合があります。ただし、養育費の取り決め時に収入が増加することがわかっていて、養育費の金額がそれを踏まえたものになっていた場合はその限りではありません。

    なお、相手がこれらの事情に該当する状況にあるからといって、勝手に養育費を支払わない、あるいは減額するといったことは、法律上認められていません。勝手に養育費を支払わなかったり、勝手に減額したりすると、債務名義に基づいて強制執行をされてしまう可能性がありますので注意しましょう。

    支払いが免除・減額されるのは、以下の方法で離婚調停で取り決めた養育費を変更したときに限られます。

    • 当事者間協議
    • 養育費請求調停
    • 養育費請求審判


    相手の要求に応じたくないからといって協議や調停を無視してしまうと自分に不利な結果になってしまうおそれもあるため、養育費減額請求をされた場合はきちんと対応することが大切です。

4、養育費のトラブルは弁護士に相談を

養育費に関するトラブルは弁護士へ相談しましょう

養育費を滞らせている相手との話し合いは精神的負担が大きく、揉める可能性があります。弁護士に依頼すれば相手との交渉を代行してもらうことができるため、相手と顔を合わせず当事者同士で話し合うよりも円滑に話が進む可能性が高いでしょう。

また、養育費の支払い義務は金銭債務であるため、未払いの場合はペナルティーとして「遅延損害金」を請求することができます。そのため、弁護士に依頼すれば未払い分の養育費の請求だけでなく遅延損害金を請求できる可能性が高まるでしょう。

さらに、強制執行などの法的な手続きや相手から養育費請求調停・審判を起こされた場合の対応を任せられるというメリットもあります。

養育費請求権には各支払い期日から原則5年(調停や裁判で取り決めた場合は10年)の時効があり、一定の期間が過ぎてしまうと未払い養育費を請求できなくなってしまうため、早めに対応することが重要です(離婚して5年たつと養育費が請求できないということではありませんので注意してください)。

そのためにも、養育費に関するトラブルでお困りの際は早めに弁護士へ相談するようにしましょう。

5、まとめ

離婚調停は話し合いによる解決を目指す手続きであり、裁判による命令ではありません。しかし、養育費の取り決めは調停調書に記載されれば確定判決と同一の法的効力を持ちます。

相手が支払わない場合は、内容証明郵便による請求や履行勧告・履行命令の申し立て、強制執行手続きなどの方法を採ることが可能です。

ただし、強制執行手続きなどは法律の専門知識が必要になるため、最適な解決方法を探るためにも弁護士への相談をおすすめします。

養育費についてのトラブルにお困りの方は、ぜひベリーベスト法律事務所 浦和オフィスの弁護士にご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています