性格の不一致で離婚しても慰謝料はもらえる? 相場はどれぐらい?
- 慰謝料
- 離婚慰謝料相場
- 性格の 不一致
さいたま市が公表している「さいたま市保健統計」によると、2021年のさいたま市内の離婚件数は1792件で、離婚率(人口1000人当たりの離婚件数)は1.37となっています。また、浦和区の離婚件数は、183件で、離婚率が1.12ですので、さいたま市内では離婚の比較的離婚の少ない地域といえるでしょう。
夫婦が離婚する理由でもっとも多いのが「性格の不一致」による離婚ですが、このような理由で離婚する場合、慰謝料を請求することができるのでしょうか。
今回は、性格の不一致を理由とする離婚で慰謝料を請求できるか、離婚慰謝料相場などについて、ベリーベスト法律事務所 浦和オフィスの弁護士が解説します。
1、性格の不一致を離婚事由としたときの慰謝料
性格の不一致を理由として離婚する場合、相手に対して慰謝料を請求することができるのでしょうか。
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(1)離婚事由が性格の不一致でも離婚は可能
性格の不一致という離婚理由は、夫婦が離婚するきっかけとして最も多い理由となっています。夫婦の話し合いで離婚を行う「協議離婚」であれば、どのような理由であっても離婚できますので、性格の不一致が離婚理由であっても離婚することができます。
また、話し合いで離婚が成立しないときは、家庭裁判所に離婚調停の申立てをすることになりますが、離婚調停も基本的には話し合いの手続きになりますので、お互いの合意があれば、性格の不一致という理由でも離婚は可能です。
しかし、離婚裁判をする場合には、裁判所に離婚を認めてもらうには、以下のような法定離婚事由があることが必要とされています。- 不貞行為
- 悪意の遺棄
- 配偶者の生死が3年以上不明
- 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがない
- その他婚姻を継続し難い重大な事
性格の不一致は、上記の法定離婚事由のいずれにも該当しません。そのため、相手も離婚には同意しているような場合でない限り、性格の不一致だけでは、裁判離婚は難しいといえます。
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(2)性格の不一致だけでは慰謝料請求できない可能性が高い
離婚慰謝料を請求するためには、相手に離婚に関する有責行為がなければなりません。性格の不一致は、夫婦のどちらか一方が悪いというわけではないことが多いので、相手に婚姻関係が破綻に至った責任があるとはいいきれません。
そのため、離婚理由が単なる性格の不一致と言うだけでは、離婚慰謝料を請求できない可能性が高いでしょう。
2、相手に慰謝料を請求できる離婚事由
性格の不一致だけでは相手に離婚慰謝料を請求することは難しいですが、性格の不一致だけでなく、以下のような離婚事由がある場合には、相手に離婚慰謝料を請求できる場合があります。
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(1)不貞行為
不貞行為は、配偶者以外の異性との間で肉体関係を持つことと考えられています。
「不倫」や「浮気」と思っても、キスや手をつないだだけ、メールで頻繁にやり取りをしているだけの場合には、不貞行為にはあたりません。また、配偶者が不貞行為をした場合には、配偶者に対して離婚慰謝料を請求できるだけでなく、不貞相手に対しても慰謝料を請求することができます。 -
(2)DVやモラハラ
配偶者から殴る蹴るなどの身体的暴力(DV)や暴言・無視といった精神的暴力(モラハラ)を受けており、それが離婚に至った原因である場合、配偶者には婚姻関係を破綻に至らせた有責事由が認められます。
そのため、このような事情がある場合には、配偶者に対して離婚慰謝料を請求することができます。 -
(3)悪意の遺棄
悪意の遺棄とは、正当な理由がないにもかかわらず、夫婦の基本的な義務である、同居・協力・扶助義務を履行しないことをいいます。
たとえば、以下のような行為が悪意の遺棄にあたる可能性があります。- 一方的に家を出ていって同居に応じない
- 配偶者を家から追い出して、自宅に戻ることを認めない
- 生活費を渡さない
- 健康で働ける状態にもかかわらず、働こうとしない
配偶者により悪意の遺棄があった場合には、有責事由にあたりますので、配偶者に対して離婚慰謝料を請求することができます。
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(4)セックスレス
正当な理由もなく長期間にわたり性交渉を拒否するセックスレスは、法定離婚事由である「その他婚姻を継続し難い重大な事由」に該当する可能性があります。
セックスレスが原因で離婚に至った場合には、性交渉を拒否した配偶者には有責事由が認められ、離婚慰謝料を請求できる可能性があります。
3、状況で変わる! 離婚慰謝料の相場
離婚慰謝料を請求することができる場合に気になるのが、どのくらいの金額を請求できるのかという点です。以下では、そのような方に向けて離婚慰謝料相場について説明します。
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(1)離婚慰謝料の算定における考慮要素
離婚慰謝料相場を理解するには、離婚慰謝料がどのような要素を考慮して算定されるかを把握する必要があります。
実務では、離婚慰謝料は、以下のような要素を踏まえて慰謝料額の算定を行っています。- 有責性(悪質性)
- 婚姻期間
- 支払者の資力
- 未成熟子の有無
- 夫婦の収入や職業
このうちもっとも重要な要素になるのが、離婚の原因となった有責性がどちらに多いのかという点です。たとえば、不貞行為で離婚に至った場合であっても、他方の配偶者にも一定の原因があった場合には、慰謝料の金額は低くなることがあります。
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(2)離婚慰謝料の相場
離婚慰謝料の金額は、法律上具体的な金額が決められているわけではありませんので、個別具体的な事情によって変わってきます。
上記の考慮要素や過去の裁判例などを踏まえて、事案に応じた慰謝料額を算定することになりますので、離婚慰謝料の相場は、ケース・バイ・ケースといえるでしょう。
なお、一般的な離婚慰謝料相場としては、50万円~300万円程度といわれています。ただし、事情によっては相場を上回る慰謝料を請求できる可能性もありますので、具体的な慰謝料額は、事案に応じて考えていかなければなりません。
4、離婚の際弁護士に相談すべきケースとは
以下のようなケースに該当する方は、自分だけで離婚手続きを進めるのではなく弁護士に相談した方がよいでしょう。
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(1)性格の不一致での離婚を考えているが相手が離婚に応じてくれない
性格の不一致は、法定離婚事由には該当しません。そのため、性格の不一致のみを理由に離婚をするためには、協議離婚または調停離婚を、目指していくことになります。
しかし、協議離婚や調停離婚は、相手が離婚に同意してくれなければ離婚することができませんので、相手がかたくなに離婚を拒否している状況では、協議離婚や調停離婚も難しいといえます。
このような場合には、「離婚できない……」と諦めてしまうのではなく、まずは弁護士にご相談ください。自分の中では性格の不一致が離婚理由だと思っていても、実際に弁護士がヒアリングを行うと、性格の不一致以外にも法定離婚事由に該当し得る事情が見つかる可能性があります。
また、現時点では法定離婚事由がない場合でも、離婚を前提とした別居を開始し、別居期間が長期間に及べば「その他婚姻を継続し難い重大な事由」に該当し離婚が認められる可能性もあります。 -
(2)離婚条件でお互いの希望に大きなズレがある
離婚にあたっては、離婚をするかどうかだけでなく、以下のような離婚条件の取り決めも必要になります。
- 親権
- 養育費
- 面会交流
- 財産分与
- 慰謝料
- 年金分割
このような離婚条件については、まずは夫婦の話し合いにより決めていくことになりますが、離婚条件でお互いの希望に大きなズレがある場合には、当事者同士の話し合いでの解決は困難になるでしょう。そのような場合にも、弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士は、具体的な状況に応じた適切な離婚条件をアドバイスし、サポートします。弁護士を活用することで、スムーズに離婚条件の取り決めができる可能性が高くなるでしょう。 -
(3)離婚手続きに関する負担を軽減したい
離婚をする際には、夫婦で離婚に向けた話し合いを行わなければなりません。しかし、離婚理由によっては、相手と顔を合わせて話をすること自体にストレスを感じる場合も少なくありません。
自分だけで離婚手続きを進めるのが不安に感じるときは、すぐに弁護士にご相談ください。
弁護士は、代理人となって相手との交渉を行いますので、離婚手続きに関する負担を大幅に減らすことが可能です。また、交渉で解決できない場合には、離婚調停や離婚裁判などの法的手続きに対応し、離婚成立まで一貫したサポートを提供します。
お問い合わせください。
5、まとめ
性格の不一致は、夫婦の離婚理由のなかで、もっとも多い理由です。しかし、性格の不一致は法定離婚事由にはならないため、それだけでは裁判離婚をすることは難しく、離婚慰謝料を請求することもできません。
もっとも、性格の不一致以外にも離婚理由があり、それの離婚理由が配偶者の有責性を基礎づけるものであれば、離婚慰謝料の請求も可能でしょう。
ただし、このような判断は、法的知識や経験がなければ正確に行うことは難しいでしょう。性格の不一致で離婚に悩まれたら、まずはベリーベスト法律事務所 浦和オフィスまでお気軽にご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
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