残業代がボーナスから引かれるのは大問題! 未払い残業代の確認方法
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埼玉県が公表している夏季賞与に関する統計資料によると、2023年6月分~8月分の3か月間に支給された賞与の1人あたりの平均支給額は、33万7849円でした。前年に比べて1万8162円の増加となっています。
ボーナスの支給は、夏と冬の2回に行われるのが一般です。しかし、会社によっては、残業代がボーナスから引かれることもあるようです。このような扱いは違法となりますので、弁護士などのサポートを受けながら適切な対応をとることが重要です。
今回は、残業代がボーナスから引かれることの問題点と未払い残業代の請求方法について、ベリーベスト法律事務所 浦和オフィスの弁護士が解説します。
1、残業代とボーナスの性質と労働基準法上の規定
そもそも残業代とボーナスは、労働基準法上、どのような性質があるのでしょうか。以下、説明します。
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(1)残業代とは
残業代とは、所定労働時間の上限を超えて働いたときに支払われる賃金です。
残業には、以下2つの種類の残業があります。- 法定内残業:所定労働時間超・法定労働時間内
- 法定外残業:法定労働時間超
「所定労働時間」とは、会社が定めた労働時間で、「法定労働時間」とは労働基準法で定められた労働時間で原則として1日8時間・週40時間です。
いずれの労働時間を超えた残業も、残業代の支払い対象となりますが、法定外残業については、会社は25%以上の割増賃金を支払う義務があります。 -
(2)ボーナスとは
ボーナスとは、毎月定期的に支払われる給与とは別に支給される、特別給与です。一般的には、夏と冬の2回支給する会社が多いですが、賞与の支払い時期や回数については、労働基準法上の定めはありませんので、各企業が自由に決めることができます。
また、ボーナスは、法律上支払いが義務付けられているものではありませんので、支給しなくても基本的には違法とはなりません。ただし、就業規則や労働契約書・雇用条件通知書などにボーナスの支払いに関するルールが定められている場合には、それに従ってボーナスを支給する必要があります。
このように残業代は、定められた労働時間以上の働きに対して支払われる賃金であるのに対して、ボーナスは会社が定めた特別給与であり、それぞれ異なる性質の報酬といえます。
2、違法となる残業代の支払われ方
以下のような残業代の支払い方は違法となる可能性があります。
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(1)毎月の残業代がボーナスから引かれているケース
会社によっては、残業が多すぎるなどの理由で、毎月の残業代が丸ごとボーナスから引かれているケースもあります。しかし、ボーナスから残業代を丸ごと引くのは、単なる残業代の不払いにあたりますので、違法となる可能性が高いです。
ボーナスの算出方法には、さまざまな方法がありますが、会社の業績や労働者の能力などが算出の基準に含まれていることがほとんどです。そのため、残業が多いことを労働者の能力についてのマイナス評価としてボーナスを減額すること自体は、合理的な計算根拠に基づいている限り、直ちに違法とはなりません。
しかし、ボーナスから残業代を丸ごと控除するというような扱いは、実質的にみて残業代の不払いにあたりますので、違法となります。 -
(2)ボーナスに残業代がまとめて支払われるケース
給与には残業代が含まれず、不定期に支払われるボーナスに残業代がまとめて支払われているというケースがあります。
しかし、残業代は、給与に含まれるべきものであるため、残業代を除外して給与の支払いをすることは、賃金全額払いの原則に違反します。また、賃金は毎月1回払いが原則ですので、残業代を半年間に一度の賞与に含めて支払うことはその原則に反しており、認められません。
そのため、ボーナスに残業代がまとめて支払われるケースは違法となります。 -
(3)一定時間以上の残業代が支払われないケース
固定残業代制度が導入されている会社では、一定時間分の残業代はすでに支払い済みであるとして、残業代が支払われないことがあります。
この場合、固定残業代について就業規則や労働契約上で予定された時間内の残業であればその分は固定残業代として既に支払われたものといえますので、支払いの対象外です。しかし、固定残業代で予定されている残業時間を超えて残業をした場合には、残業代は固定残業代とは別に支払われなければなりません。 -
(4)そもそも残業代が付かないケース
会社から残業代が付かない“サービス残業”を強いられている労働者もいます。しかし、残業時間に応じた残業代を支払うのは会社の義務であり、それを請求するのは、労働者として当然の権利ですので、サービス残業であるからといって残業代を支払わないのは違法となります。
3、未払いの残業代を請求する方法
未払い残業代がある場合には、以下のような方法で会社に請求していきます。
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(1)残業に関する証拠収集
会社に対して残業代請求をするにあたっては、残業をしたことを裏付ける証拠が重要になります。証拠がない状態で会社に請求したとしても、残業をしたか明らかでないとして支払いを拒否されてしまう可能性がありますし、裁判をしても残業代の支払いを命じてもらうことは困難です。
そのため、残業代請求をするには、まずは残業に関する証拠を集めるようにしましょう。
残業に関する代表的な証拠としては、以下のものが挙げられます。- タイムカード
- 業務日報
- 勤怠管理システムのデータ
- パソコンのログイン、ログアウト履歴
- 業務に関するメールの送受信履歴
- オフィスの入退室履歴
- 交通系ICカードの利用履歴
- 残業に関するメモや日記
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(2)残業代の計算
残業に関する証拠が集まったら、次は残業代の計算を行います。残業代の基本的な計算式は、「1時間あたりの基礎賃金×割増賃金率×残業時間」という計算式になりますが、各項目の内容や計算方法は、非常に複雑なものとなっています。
一般の方では正確に残業代を計算することは難しいといえますので、専門家である弁護士に相談し、残業代計算のサポートをしてもらうのがよいでしょう。 -
(3)内容証明郵便の送付
会社に対して未払い残業代を請求する場合には、まずは内容証明郵便を利用して、書面により請求を行うのが一般的です。
内容証明郵便とは、「いつ・誰が・誰に・どのような内容の文書を送ったのか」を証明できる形式の郵便です。内容証明郵便を利用すれば、会社に対して残業代請求をしたという証拠を残すことができますので、残業代請求権の時効による消滅が迫っているようなケースでは特に有効です。 -
(4)会社との交渉
内容証明郵便が届いたら会社との交渉を開始します。会社との交渉は、残業代計算の根拠や証拠を示しながら、話し合いを進めるとスムーズに交渉を行うことができます。
会社との交渉により合意に至った場合には、口頭での合意で終わらせるのではなく、必ず合意書などの書面を作成するようにしてください。 -
(5)労働審判・訴訟
会社との話し合いで解決できない場合には、裁判所に労働審判の申し立てや訴訟の提起をする必要があります。
労働審判とは、労働者と会社との間の労働問題を迅速かつ柔軟に解決することができる手続きです。原則として3回以内の期日で終了しますので、裁判に比べて迅速な解決が期待できます。また、労働審判の手続きでは、まずは調停による解決が試みられますので、実情に即した柔軟な解決が期待できます。
訴訟前に必ず労働審判を利用しなければならないという決まりはありませんが、話し合いによる解決の余地があるなら、訴訟提起前に労働審判を検討してみるとよいでしょう。
4、労基署と弁護士どちらに相談すべき?
残業代がボーナスから引かれるなどの残業代未払いの問題が生じた場合には、労働基準監督署と弁護士のどちらに相談すればよいのでしょうか。以下では、労働基準監督署と弁護士それぞれの役割を説明します。
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(1)労働基準監督署
労働基準監督署とは、企業による労働関連法令違反の取り締まりや監督を行う行政機関です。残業代未払いは、労働基準法違反となりますので、労働基準監督署に相談をすれば、事業所への立ち入り調査を行ってくれる可能性があります。
また、調査の結果、残業代未払いが明らかになれば、指導・是正勧告などにより、残業代を支払ってもらえる可能性があります。労働基準監督署への相談は、無料ですので、費用をかけずに未払い残業代の問題に対応したいという方にはおすすめです。
注意点としては、労働基準監督署に相談をすれば、必ず対応してくれるというわけではなく、対応するまでにある程度時間がかかることがあることです。また、労働基準監督署による指導・是正勧告には、強制力がありませんので、会社が任意に支払いに応じない場合には、有効な手段とはいえないでしょう。 -
(2)弁護士
弁護士は、法律の専門家としてあらゆる法律問題に対応することができます。未払い残業代の問題が発生した場合には、残業に関する証拠収集、残業代計算、会社との交渉、労働審判・訴訟などの手続きを労働者に代わって行うことができます。
労働基準監督署への相談では、労働者個人が会社と対応しなければなりませんが、弁護士に相談をすれば、弁護士が労働者の代わりに対応してくれますので、労働者の負担はほとんどありません。
自分で対応するのが不安だという方や何から手を付ければよいかわからないという方は、弁護士に相談するのがおすすめです。
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5、まとめ
残業代がボーナスから引かれるというのは、実質的には残業代の未払いにあたりますので、違法な扱いといえます。このような扱いを受けたときは、会社に対して未払い残業代を請求することができますので、まずは弁護士に相談することをおすすめします。
会社に対する未払い残業代請求をお考えの方は、ベリーベスト法律事務所 浦和オフィスまでお気軽にご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
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